2013年2月26日火曜日
古代史21世紀の研究課題:ムー大陸(誤解から生まれた)
出典:謎解き古代文明:㈱彩図社・2011年
「写真」トロアノ絵文書(左)と「ランダのアルファベット」(右)
プールプールやル・プロンジョンらが
「幻の大陸」の手がかりを求めた絵文書は、
実際には儀ネLや暦について記したものだった
●誤解から生まれた「ムー」大陸
地質学的な条件から考えれば、
ムー大陸は太平洋に存在してはいなかった。
では、ジェームズの研究が間違っており、
ムー大陸がどこか別の場所にあった可能性はないだろうか。
いや、残念ながらそれもないだろう。
なぜなら、「ムー」大陸自体がそもそも誤訳の産物であるからだ。
きっかけはフランス公使館付司祭上がりのマヤ研究家
チャールズ・エティエンヌ・ブラッスール・ド・ブールブールの誤訳だった。
プールプールは1863年に
スペインーマドリードの王立歴史アカデミアの図書館で、
ユカタン司教を務めたディエゴーデーランダの遺した
『ユカタン事物記』の写本を発見する。
『ユカタン事物記』はスペインの支配下にあった16世紀のユカタン半島の
文化や風俗、言語などを記録したもので、
ランダの手によるマヤ文字とスペイン語の対照表
「ランダのアルファベット」が掲載されていた。
プールプールはこれに長い解説とフランス語訳をつけて1864年に公刊した後、
マドリード大学の古文書学教授から
『トロアノ絵文書』を借用し、解読を試みた。
『トロアノ絵文書』はマヤ文字と絵で構成された古写本で、
その内容は当時、まだ謎とされていた。
当初、プールプールはこの古写本を「地方地主が使う暦の一種」と考えていた。
しかし、
やがてそこにはアトランティス滅亡の話か書いてあると信じ込んでしまったのだ。
ブールブールは読解中、一対のシンボルがたびたび登場することに気がつく。
そのシンボルは「ランダのアルファベット」にあった
「M」と「U」にどことなく似ていた。
プールプールはこれこそ大災害を被った国の名に違いない、
それは「MU」といったのだ、とかなり無茶な断定を下してしまった。
ここに「ムー」誤訳の歴史が始まったのである。
この誤訳にさらなる屋上屋を架したのが、
19世紀フランスの医者兼考古学者・写真家の
アウグストゥス・ル・フロンジョンだった。
ループロンジョンの解読は、
当否を別としてブールブールより多少洗練されてわかりやすくなっていた。
ループロンジョンが1900年に発表した
『マヤ/アトランティス--ムー女王とエジプトのスフィンクス』によれば、
「ムー」は失われた大陸そのものの名前ではなく、
大陸にあった超古代マヤ王朝の女王の名であった。
女王「ムー」はクーデターによって夫を殺され、
ナイル川湖畔に亡命した。
そこで築いたのがエジプト文明で、
亡き夫のために建てたのがスフィンクスだったというのだ。
※⑥チャールズ・エティエンヌ・ブラッスール・ド・ブールブール
(1814~1874)
フランス北部のダンケルクに近いブールブール生まれ。
若いころから考古学に関心を持ち、1845年に聖職に就く。
31歳のときメキシコに渡り、
先住民の言語を習いながら貴重なマヤ古文書を発見している。
1857年にヨーロッパに戻ってからは、
余人の追随を許さないペースでマヤ研究を発表している。
※⑦『ユカタン事物記』
フランシスコ会の初代ユカタン司教、
ディエゴーランダ(1524~1579)の著作。
1566年ころに書かれたマヤ民族誌で、
古代マヤの神話・歴史・風俗・社会・文学・暦・
スペイン人による征服・植民の歴史についての記述に及ぶ。
※⑧画像の出典
左:Wikipedia「ムー大陸」
右:『ムー大陸の謎を解く』(大陸書房・1986年)20ページより。
※⑨アウグストゥス・ル・プロンジョン(1825~1908)
ドーバー海峡にあるフランス領ジャージー島生まれ。
パリのエ芸学校を出て19歳で南米に渡る。
アメリカで医者・測量士となり、さらにイギリスに渡って写真術を習得した。
1873年から1885年までユカタン半島を拠点に、
夫妻で遺跡調査と撮影を行った。
75年チチェン・イツァを発掘。
出土した彫像を「チャークモル」と命名した。
『My ブログ』
スメル(シュメール) 八千年
古代メソポタミア
歴史徒然
ウワイト(倭人):大学講義録
ウワイト(倭人)大学院講義録
オリエント歴史回廊(遷都)
古代史つれづれ
古代史の画像
ネット歴史塾
古代史ブログ講座
ネット歴史塾
ひねもす徒然なるままに
「終日歴史徒然雑記」
「古代史キーワード検索」
『特定非営利活動法人森を守る紙の会: NGO-SFP』事務局長:金原政敏
《参考》
《スメル(シュメール)文明》
「スメル(シュメール)文明」
《パーリ語辞典》
「パーリ語辞典」
世界史年表・地図
日本史年表・地図
古代史年表・地図
オリエント史年表・地図
メソポタミア史年表・地図
大シリア史年表・地図
小アジア史年表・地図
ペルシア史年表・地図
イラン史年表・地図
インド史年表・地図
西アジア史年表・地図
"南アジア史年表・地図
中央アジア史年表・地図
北アジア史年表・地図
東南アジア史年表・地図
東アジア史年表・地図
中国史年表・地図
朝鮮史年表・地図
ヨーロッパ史年表・地図
ギリシア史年表・地図
エーゲ海史年表・地図
エジプト史年表・地図
北アフリカ史年表・地図
考古学ニュース
装飾古墳
古代時代の考古学の最新発見・発表・研究成果
最新の考古学的発掘の方法
存在価値が問われる我が国の発掘考古学の現状
登録:
コメントの投稿 (Atom)
0 件のコメント:
コメントを投稿