2010年6月18日金曜日

人名・官名の正しい発音(1)


 出典:加治木義博:言語復原史学会
    『魏志倭人章』詳解1
    垂仁天皇の邪馬壹国
    57~60頁

 
 では郡使たちは、どんな発音で当て字をしたのであろうか。

 これはそれほど難しい問題ではない。

 なぜなら彼等役人たちは、どんな地方の出身であろうと、

 当時の中国の標準語による文学の試験をうけて、

 採用されたのである。

 もちろん郡使の報告書は3世紀当時の標準語で書かれている。

 そうでないと中央官庁の人々が読んでも、

 何という名前なのか分らないからである。

 こうした中国の古代標準語が、

 どんな発音だったかを、非常に詳しく研究した学者がある。

 スエーデンの中国研究家<カールグレン>である。

 氏は古代の『詩経』を現代の中国語で読むと、

 詩の生命である韻が、

 無茶苦茶になってしまうことに気づいて、

 それは古代の発音が現代のそれと、

 違っていたためではないかと考えた。

 そこで各時代の標準語の辞書などをもとに、

 「時代による発音の違い」を永年かけて調べ上げたのである。

 氏はそれによって、漢字の発音は大別して漢の時代以前と、

 それ以後、明(ミン)の時代までと、

 清(シン)の時代以後との、

 三とおりの異なった発音があることを明らかにした。

 同じ文字でも時代によって、かなり発音に差があったのである。

 その後この研究は中国の学者に引継がれて

 「羅常培」氏らはさらに6期に細分している。

 なぜそんな変化が生じたのであろうか。

 それは中国が多民族国家で、

 中央政権の言語が革命のたびに変ったからである。

 新しい中央政権は、

 自分たちの言葉を全国民に押付けて標準語にする。

 だから発音は変らないわけに行かない。

 『魏書倭人章』が書かれた当時は漢の時代のあとで、

 まだ魏晋音が生れ始めたごく初期に当たっているから、

 その人名官名は<カールグレン>の分類による上古音で読めば、

 ほぼ本名に近い発音で聞取れることになる。

 『参考』

小林登志子『シュメル-人類最古の文明』:中公新書

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