2010年6月21日月曜日

変化した『記・紀』万葉音


 出典:加治木義博:言語復原史学会
    『魏志倭人章』詳解1
    垂仁天皇の邪馬壹国
61頁

    
 しかしこれで、すぐ『記・紀』の人名と、

 比較できると思うのは早トチリである。

 なぜなら、これで出た答は3世紀当時の中国の発音であって、

 8世紀か、それ以後に書かれた『記・紀』の発音は、

 これとは随分ちがったものだからだ。

 さきに見た弥馬升を<ミマツ>と読んだり、

 <ミマジョウ>と涜んだりしている事実は、

 もうすでに3世紀の発音が分らなかったことを、

 はっきり示しているのである。

 『記・紀』の人名、官名のもとになった記録を、

 『記・紀』の筆者は自己流の読み方をして、

 いい加減に当て字していたことが、はっきり見て取れる。

 そうしたものがどれ位い違っているか、

 次ぎの一覧表でよくみていただきたい。

(言語学で使う専門的な表音記号は、

 多くの読者にはわかりにくいので、カナ書きを採用した。)

    カールグレン氏の上古音と『記・紀』万葉時代音の比較

   カ氏   記・紀  

 伊 セル   イ    

 都 ト    ト・ツ

 烏 オ    ウ・ヲ  

 奴 ノ    ド・ヌ・ノ

 呼 ゴ    ヲ    

 那 ナル   ナ

 越 ギワッ  ヲ    

 卑 ピェグ  ピ

 支 チェグ  キ    

 弥 ミャル  ビ・ミ

 耆 ギャル  キ    

 馬 マ    マ・メ・バ

 古 コ    コ    

 模 マグ   ム・モ

 渠 ギョ   コ・ホ  

 謨 マ    ム・モ・ボ

 斯 シェグ  シ    

 母 マ    モ・ボ

 爾 ニャル  ジ    

 柄 ピヤング ヒ

 多 タ    タ    

 与 ジョ   ヨ・ヲ

 智 チェグ  チ    

 利 リャ   ト・リ

 市 ヂヤ   チ


 『参考』

小林登志子『シュメル-人類最古の文明』:中公新書

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