2010年6月12日土曜日

石体高千穂宮と鬼道(2)

 出典:加治木義博:言語復原史学会
    邪馬臺国の言葉
    コスモ出版社
    181~185頁

  こうみてくると、

 日本建国にまつわる古い<伝承>や<地名>や<人名>や<称号>が、

 この一地点に集中していることを認めざるを得ない。

 しかもそれは同時に、<卑弥呼>と<観世音菩薩>にも固く、

 しつかりと幾重にも結びついているのである。

 <観世音>は御存知の通り様々な変身がある。

 <姫講>とよばれるものは中国の<娘々廟>や<慈母観音>などと

 同じ女体のものであることも明らかである。

 それは<神功皇后の聖母>という別号からもうかがえる。

 皇后の像は常に皇子を抱き武内宿禰を従えている。

 この画像と瓜二つの聖母像は、いま台湾から

 東南アジア一帯に見られる。

 その宗教は「天道」と呼ばれ、

 <道教>と<仏教>と<儒教>とを加味したもので、

 信者たちはそれを宗教とは考えず、道徳そのものとし、

 厳格な菜食主義を守るが出家することはしない。

 その教義内容は非常に高度のもので、

 またその儀式は周礼をそのまま伝えており、

 その発祥の古さがわかるが、

 筆者は幸運にもその私儀に特払招待されたのである。

 それは<天才><地才><人才>という官名をもった

 三女性による<神託神事>であって、

 殊に中心になる天才は十代はじめの少女であり、

 それが自己催眠中に驚くほど高水準の託宣を行なうのである。

 教団との約束でこれ以上の公表は許されないが、

 それが眼のあたりに、

 神功皇后や卑弥呼、壱与を見る思いのものであったことだけ

 はつけ加えておこう。

 ここで注意を要するのは<天道>の名である。

 中国音で<天>は<チヌ>であるから、

 沖縄の<チヌ>、本土の<キノ>で、<鬼の道>につながる。

 沖縄では天照大神に相当する女神を「てだこ」と呼ぶ。

 <テダ>は照と一致せず、語源は<天道>だ、

 というのが語学界の定説である。

 とすれば私達が太陽を

 「お天道(てんとう)様」と呼ぶのと一致する。

 また、この天道がインドを意味することも

 天道(チンドウ)(=シンドウ=ヒソドウ)という

 呼び方で明らかである。

 またそこは仏教以前からの神仏が鎮座している別世界でもある。

 <鬼道>をシャーマニズムの一種とする前に、

 <シヤーマン>が何に起源するかを考えた人はいない。

 幾多のシヤーマニズム研究書はいずれも現状の記録であって、

 漠然たる過去にしかさかのばらない。

 しかしその名は明らかにインドの沙門(シヤマン)であって、

 それがヒンドウ教に由来することを物語っている。

 それは様々な姿に分化してユーラシア全域に

 拡がっているのである。

 このことに気づかなかった、従来のシャーマニズムという分類は、

 <天道>などの高度のものの存在することに無知で、

 南島の<ノロ>や本州の<イチコ=イタコ>。

 <オロチョン>やツングースの<シャーマン>を指し、

 低度の降霊術師、口よせの類いだけを

 対象としていることを意味する。

 卑弥呼の鬼道を、

 これらと類似したものとする従来の考え方は

 根本的に間違っている。

 倭人達は冒頭で見たように喪に服し、

 精進を行う高度の仏教精神と習慣を備えており、

 詐欺的託宣によつてゴマカされるような低いものではなかった。

 一方ではヒンドウの神々を祭りながら一方では仏教を知り、

 政治上には進んだ科学知識と

 判断力とを宗教的雰囲気の中で効果的に使うだけの

 知性をもっていた。

 これは日本の神道が早くから備えていた能力であり、

 真言密教や現代の天道に直接結びつく形のものであった。

 これをシャーマニズムと呼ぶことができるであろうか?。

 魏人は後漢代の鬼道と混同したが、

 それはより高度の複合宗教「神道(シントウ)」であったのである。

 「コラム:過渡期の観世音菩薩鏡」(加治木原図)

 伝長野県飯田市出土の<四仏四獣鏡>の一部で

 宮内庁にも千葉県出土の同画像鏡がある。

 <半円方格帯>など漢魏代の特徴を備えるが、

 その画像から中国製ではないとされる。

 <竜虎>が大きく表現されていることから

 <神仙思想>のものとするなど、

 仏像と断定したものはないが仮りに

 <四仏鏡>と呼ばれて来た。

 しかしこれは疑いもなく仏像に属する様式を次の通り備えている。

 ① 蓮のうてなを象った光背をもつ。
 
   以下菩薩像としての様式を備えている。

 ② 頭上の二卵型は頭上面。

 ③ その下に天冠台。

 ④ 首に三道。

 ⑤ 胸に条帛。

 ⑥ 左右に天衣を垂れ。

 ⑦ 二足を僅かに見せ。

 ⑧ 蓮肉の上に立ち。

 ⑨ その下に重なり合った蓮弁がある。

 ⑩ 左右に脇侍を従がえ。

 ⑪ 脇侍は火焔の光背と。

 ⑫獣の上に座している。等々。

 『参考』

小林登志子『シュメル-人類最古の文明』:中公新書

0 件のコメント:

コメントを投稿