出典:加治木義博:言語復原史学会
『魏志倭人章』詳解1
垂仁天皇の邪馬壹国
61頁
しかしこれで、すぐ『記・紀』の人名と、
比較できると思うのは早トチリである。
なぜなら、これで出た答は3世紀当時の中国の発音であって、
8世紀か、それ以後に書かれた『記・紀』の発音は、
これとは随分ちがったものだからだ。
さきに見た弥馬升を<ミマツ>と読んだり、
<ミマジョウ>と涜んだりしている事実は、
もうすでに3世紀の発音が分らなかったことを、
はっきり示しているのである。
『記・紀』の人名、官名のもとになった記録を、
『記・紀』の筆者は自己流の読み方をして、
いい加減に当て字していたことが、はっきり見て取れる。
そうしたものがどれ位い違っているか、
次ぎの一覧表でよくみていただきたい。
(言語学で使う専門的な表音記号は、
多くの読者にはわかりにくいので、カナ書きを採用した。)
カールグレン氏の上古音と『記・紀』万葉時代音の比較
カ氏 記・紀
伊 セル イ
都 ト ト・ツ
烏 オ ウ・ヲ
奴 ノ ド・ヌ・ノ
呼 ゴ ヲ
那 ナル ナ
越 ギワッ ヲ
卑 ピェグ ピ
支 チェグ キ
弥 ミャル ビ・ミ
耆 ギャル キ
馬 マ マ・メ・バ
古 コ コ
模 マグ ム・モ
渠 ギョ コ・ホ
謨 マ ム・モ・ボ
斯 シェグ シ
母 マ モ・ボ
爾 ニャル ジ
柄 ピヤング ヒ
多 タ タ
与 ジョ ヨ・ヲ
智 チェグ チ
利 リャ ト・リ
市 ヂヤ チ
『参考』
小林登志子『シュメル-人類最古の文明』:中公新書
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