出典:加治木義博
日本人のルーツ
保育社:カラーブックス
<日本人のルーツ>-その探求の一方法-
57ページの像を前からみると、7つにわかれた頭をもった蛇が、どぐろを巻いた上に座っている仏様の像である。
これはお釈迦様が苦行をしていると、竜王がその頭を笠のようにさしかけて、雨露から守った、というので「竜王護仏像」といわれるもので、東南アジアで広くみられる仏像である。
よく見て戴くとわかるように、蛇の7つの頭が、次第に変形して木の葉になったり、ピンと立った衣紋や冠のさきになったりしてしまったものがある。
しかし、7つの突起が数えられるので、もとは同じものだったことが証明される。
時と所によって変化して行ったのである。
<写真>
●竜王護仏(タイ)
●竜王護仏(タイ)
●如来(ビルマ)
[竜王が観音様に変わるか]
その7つの突起はさらに発達してタイのものでは、まるで太陽の光のように放射しており、ネパールのターラ菩薩では肩を飾る大きな花びらに変わり、さらに進んで左端の観音像の手と冠になってしまう。
他の像と見比べて戴くとよくわかるが、仏のもとの手のほかに6本の手が増えたのは、竜王の頭のせいである。
手は左右対称になっているから、真ん中の頭は手にすることができないので、突出した冠に変えられたのである。
沢山手のある仏像は、一見不思議なものであるが、それはいきなり考え出されたものではなく、こんな風に少しずつ変形し、解釈が変わっていったものなのである。
●如来(ラオス)
●竜王護仏(タイ)
●ターラ菩薩(ネパール)
●観世音菩薩(ネパール)
『参考』
小林登志子『シュメル-人類最古の文明』:中公新書 『メソポタミア世界』
歴史研究家「小嶋 秋彦」
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