出典:加治木義博:言語復原史学会
邪馬臺国の言葉
コスモ出版社
113~115頁
「地図:マレー語圏の拡がり」(加治木原図)
地図を一見して戴いただけで
マレー語圏の広大さがおわかり戴けると思う。
これは最近の研究結果によるもので、
これはさらに拡大されても、小さくなることはない。
もっとも言語だけでなく、あらゆる分類というのは、
僅かに標準が変っただけで、
ガラリと揺れ動く不安定なものである。
これが絶対に正しいといえる分類など、
この地球上には一つもない。
あくまで。
大体の、おおよその、ほぼといった形容詞が必要なもので、
必ず主観が混入している。
ことに言語の分類は、境界のない地球上を、人為的に区切って、
常に移りかわる人の流れと時の流れを止めて、
仮の基準を作り出したものにすぎない。
マレー語、ポリネシア語、インド語といっでも、
その中には互いに同じ共通語をもっているのであることを、
心にとめておいて戴きたい。
このおおまかに拡げた網の中に入る単語約7万ほどの中から、
古来のものと考えられるもの約1万6千を選び出し、
これを日本語と比較してみた結果、
日本語と直接間接に関連性をもっているものは
半数以上の1万語をこえている。
この共通語辞典は近刊の予定で整理を進めているから、
詳細はそれに譲って、
本書進行上必要なものだけを抜粋して御覧にいれ、
さらに巻末の抄辞典で補なうことにしてある。
この言語はその地域の広さから、すぐ察しがつくように、
150から200種におよぷ方言を含んでいる。
しかし、いま読者が求めているものは分類でも、
語学でも会話の習得でもなく、
日鮮語との関連を手短かに検討するという一点だけであるから、
間接的で面倒なものは一切抜きにして、
一見してわかる形で、カタカナ表記にする。
これは以後の各語に対しても同様で
以後は一々ことわらないから御注意戴きたい。
『日本マレー共通語の一例(1)』「マレー語」=「日本語」の順 ()内はマレー語の意味
アイ=あい(ハイ=そうです)。
アラン=有らぬ(意味や値打のない)。
アラス=在らす(居られる)。
アレヘ=あれへ(位置、方向を変える)。
アレク=歩く(往来する)。
アッライ=粗い(大きい)。
アルウン=荒海=鹿児島弁のアラウンに一番近い(怒涛)。
アマツ=天津(最上。その上に)。
アングット=あげた=嘔吐した(悪酔)。
アングット=あがった=ぼんやりした(恍惚状態)。
アル=荒る(騒乱)。
アサ=麻(麻)。
バチル(下痢)
バチソ(悪臭)=ばっちい=汚い。
バユィ=ぼ-や(赤ん坊)。
バンガイ=番外(放棄)。
べチャク=べちゃつく(泥だらけの)。
ベラバット=ベラは「木竹片、枝」のバットは「木刀」の共に鹿児島弁(木刀)。
ブラレイ、ブライ=ぶらりハ象の鼻)。
ブルグガク=ぶるぶるがくがく(震えてがくがくする)。
プロレー=ぼろい(儲け)。
ブルスツル=振り捨つる(不和になる)。
ボンコク=ぶかくこう(不恰好)。
チュカル=ちから(カ)。
チュカム=つかむ(つかむ、つまむ)。
チュビト=つめった。ちょびっと(つまむ)。
チュラカ=つらか<鹿児島弁>(辛い)。
チェモク=せめぐ(争う)。
チョーリン=チドリ(千鳥)。
チョラン=チョロまかす(ごまかす)。
チョテク=ちよっと(少し)。
チュチョク=つつく(つつく)。
チュケ=つけ(年貢、代金、税金)。
ダイウスカン=だいすかん(嫌いと罵る)。
ダマイ=ダマイやん<鹿児島弁で「黙れ」>(静かに)。
ダゥムパン=談判(誇大にいう)。
ヅカット=直か(近く)。
ディ=……で(……で)。
ディアム=ダマれ(黙れ)。
ジンキス=ジンキ<鹿児島弁>(悋気・嫉妬)。
ドオ=どおぞ(何卒)。
ドオ?=どお?・(如何?)。
ヅリャ=つら(面)。
ヅルヤナ=ずるいやナ(ずるい。悪い)。
エエッ=ええッ!(驚きの声)。
エジット=(いじった)。
エロク=えらく(大変、素敵)。
ウンチェ=おぬし(御主)。
ヒナ=お雛様(女性、娘)。
ガダ=カタ(抵当)。
ガラ=カラ<=ソラ=空>(空、空間)。
ガマン=我慢(我慢できない)。
ガムガム=がみがみ又はかんかん(怒る)。
ガンタ=がんたれ<鹿児島弁>がしんたれ<河内弁>(駄目な)。
ガラ=からい(塩からい)。
ガリング=かり-こ<鹿児島弁>(背負い籠=担ぐ籠)。
グラフ=くらう(暗う)。
クロー=苦労(苦労、ため息をつく)。
グムビラ=がんばれ(頑張れ、鼓舞する)。
ゲンガム=拳骨(げんこつ)。
ギレク=キリ(錐)。
ハマギガス=ホラ貝<ギガスはラテン語で大きい=ホラ貝の学名>(浜の大貝)。
ハラウ=払う(追い払う)。
ハンバ=飯場(労働者)。
ハムパス=半端もの(屑。かす)。
ハン=おはん<鹿児島弁>(あなた)。
ハンツ=はんつ<大阪弁>(できそこない)。
ヒマツ=しまつ(節約)。
ヘングス=鼻糞(鼻糞)。
ヒナ=ひな(鄙、卑賎)。
イコー=行こう(行こう)。
イコマイ=行こまい<和歌山弁>(行こう)。
イクッ=行くっ(ついて行く)。
イノー=いのう<関西弁>(帰ろう)。
ケーレ=け-れ<関東その他>(帰れ)。
イサク=いさちる<日本古語、3~10世紀>(泣く)。
イサ=いさよい(夕方)。
ジャガラン=よからぬ(不良)。
ジャライ=矢来(竹垣の一種、竹やらい)。
ジャハッ=邪悪(邪悪)。
ジャレ=やる(有能な)。
ジャラフ=さらう(掠う)。
ジャッ=去ッ<鹿児島弁>(去る)。
ジャチ=じゃち<鹿児島弁>(本当だそうだ)。
ズバー=ずばー<鹿児島弁>(沢山)。
ジェジェー=じ上じエに(徐々に)。
ジェロー=じろっと(にらむ。鋭く見る)。
ジュレー=つれ-<関東弁>(辛い)。
ジジャク=自若(態度が不変)。
ジュガ=じやが(だが)。
ジュジョー=じゅじょ<鹿児島弁>(かなり、相当長く、手軽でない)。
『参考』
小林登志子『シュメル-人類最古の文明』:中公新書
0 件のコメント:
コメントを投稿