出典:加治木義博:言語復原史学会
邪馬臺国の言葉
コスモ出版社
134~136頁
「写真:シバ大神の神像」(今村甫氏蔵)
シバ神の像はヒンヅー教の各派によって解釈が異なり、
また仏教にも大自在天としてとり入れられており、
その像も多くの種類がある。
しかしそのいずれもが頭骸骨を連ねたネックレスを
かけていることが共通している。
これは<御頭祭>が示すものと同一の考えに基くもので、
その威力を象致しているのである。
写真の像はその妻<カリー>を伴ったもので
北インド神像の形式を備えている。
シバの表記はサンスクリットとインドシナでは。
ジャワでは。
マレー語圏ではまたは。
ボルネオではと変わる。
この<ニワ>はこを<ミ>と発音する沖縄へ入ると
<ミワ>と発音される。
<三輪の大神>は<シバ>神を意味する。
またインドでは<シバ>は<ジャッカル>をも意味する。
これは日本では<狼>にあてられたことが、
<オオカミ>という和名で証明されるのである。
また中国地方にあるイザナミ伝説地が<ヒバ>山と呼ばれ、
また志波彦神社(宮城県の元国幣中社)そのほか
<シバ>神を祭るものはかなりの数にのぼる。
沖縄では<庭><ニワ>を<ミヤ>。
<新><ニイ>を<ミイ>(<新婿><ニイムコ>→<ミイムーク>など)。
<睨みくらべ>を<ミイクウミー>などと、<ニ>を<ミ>と発音する。
またこれまで語意も語源も不明とされてきた
「ミシャグチ神」とは何か。
これもパーリ語で読んでみると一遍に謎はとける。
<シバ神>の故郷インドには今は死語になった
パーリ語という言語があった。
それによると<シバ>とは<幸福>、<吉祥>を意味する。
これにはまた<平安>、<安泰>の意味も含まれている。
<シアワセ>という日本語と、この<シワ>も似ているが、
次のように熟語になる。
「シバ・ガミ・マッガ」。
これを直訳すると<安全の法>、<平安への道>ということになる。
これに対して「安全を護る」「守護する」はパーリ語で<グッチ>。
<供>、<従者>は<ミッサ>という。
「ミッサグッチ」とは<守護する供人>ということであり、
<ミシャグチ>神とは本来<シバ神>を
<守護する供神>のことだったのである。
とすると、諏訪の神使が各村にいる<ミシャグチ>神を
召集して神事を始める理由も
初めて理解できるのである。
またインドでは<牛>が神聖視されている。
これは牡牛が<シバ>神の顕現であると信じられてきたためで、
牛や角が聖なるものの象徴とされるのである。
このことが理解できないとインドからマレー語圏、
さらに我が津々浦々に祭られる神社から伊勢神宮に至るまでの
「千木」の神聖さが不明になるのである。
その<ヌガンディ>の名をもつ<牛の像>は実は我が国にも
古くから祭られていた。
それは現在でもなお各地で見られる。
ほかでもない<天神様の牛>である。
世俗には菅原道実が太宰府へ流された際、
彼を運んだ牛車の牛であるとされている。
しかしこれは余りにも不合理な説明である。
供をしたのは牛だけではないし、
流人が船でなく牛車に乗って福岡まで行ったというのもおかしい。
よく考えてみると、
天神様の牛には全く必然性が無いことがわかるのである。
これは理由ははっきりしている。
天神様というのは菅公よりはるかに前から祭られていた神で、
当時すでに祭神の不明になっていた社に、
道実を合祀しただけのことなのである。
もうおわかりのように<天(チヌ)神>とは<角(ツノ)神>であり、
<牛>が本体あったのである。
そして同じ京都の大氏神(うじがみ)は葵(アオイ)祭で
名高い賀茂社であるが、
その祭神中の氏の祖は、<加茂建角身命>であり、
その孫神は<賀茂別雷命>である。
<角>と<雷>がセットになっていて、
天神様の先祖を証明しているのである。
「コラム:伊勢はシバ大神の名」
<シバ>神はインドでは、
Is、Isa、Isana、(イス、イサ、イサナ)という通名で
呼ばれている。
<イサ>の大神または<イサナ>大神が、
鹿児島弁や関東弁式に語尾のをと
発音して<イセ>の大神となったことは疑問の余地がない。
また仏教化して(マハ・スワラ)とも呼ばれている。
直訳すれば<マハ>は<大>。
<スワラ>は<日や光または声を発する者>という意味である。
これに漢字をあてれば諏訪羅(スワ国)。
命令を発する者「命<ミコト>」である。
それは同時に<日の国>、<日の神>でもある。
さらに伊勢国風土記は、
この2つの地名を結びつける重要な役割を果たしている。
<国津神>の<伊勢津彦>は神武東征の時、
<天日別命>に国譲りを迫られて東に去り、
割注に「今信濃の国に来り住む。」とある。
彼は<地名>と<空っぽの神宮>を残して行ったのである。
『参考』
小林登志子『シュメル-人類最古の文明』:中公新書
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