出典:加治木義博:言語復原史学会
邪馬臺国の言葉
コスモ出版社
127~128頁
「写真:スラウエシの神殿」
「写真:神明造の神殿」
(いずれも模型標本=筆者所蔵)
神明造は伊勢神官に見られる建築様式であるが、
それをスラウェシ(セレベス島)に今も見られる神殿と
比較してみると多くの共通点が見られる。
① 神明造の特徴とされる棟持柱は
スラウェシのものにも明らかに認められる。
② それは左右に突き出た屋根という特別な共通物を
支えるためのものであることがよくわかる。
③ 高床であること。
④ その床は四方に広く張り出してバルコニーを形成している。
⑤ どちらも牛頭の飾りをもっていること。
スラウェシのものは棟でなく壁面に、
誰が見てもわかる描写のものをとりつけている。
神明造は様式化が進んで誰一人牛頭で
あることに気づかなかった。
このことは同じ原型から出発したものではあっても、
スラウェシでは原始的状態を止めている。
ということができる。
なお牛頭の上部にL字型の突出物があるが、
これと同じものが家屋文鏡の神殿にも描かれている。
また共に切妻屋根である点と共に、
もう一度比較して御覧戴きたい。
この他まだ多くの共通点があり、
さらに模型でなく実物同志比較すれば面白いが、
本書では逸脱になるから省略する。
伊勢神宮の建築様式のうちで特に印象的なのは
左右に長く突出した切妻屋根と、
それを支えるために屋外に独立して立てられた
「棟持柱(むねもちばしら)」であるが、
写真でおわかりの通り、
全く同じ構造の棟持柱をもった建築様式が
インドネシア各地に見られる。
また、これを見ると、
何故棟持柱が必要なのかがよく理解できる。
その屋根の張り出しは伊勢のそれよりも、
はるかに大きく日蔭を作っているからである。
また、その神殿には牛の頭の彫刻がつけられている。
これは他の様式の神社では棟の両端にあって、
丁度日本の千木にあたるものが、
牛の角を表現している。
これと全く同じものが、
さきの家屋文鏡の中にもはっきりと写しとられている。
こうしたことは、古代の家屋文鏡の製作者と、
今セレべス島などに住んでいる人々との間に、
はっきりとつながりのあることを示しているのである。
このことは名詞の面からも明らかになる。
私たちがこれまで<千木>を<チギ>とよんできたのは、
正しくは「チヌギ」(千之木)と助詞の「ヌ」を入れて、
読まねはならなかったのだ。
ということである。
なぜなら、<チヌギ>とは沖縄弁で、
ツ(チ)ノ(ヌ)ギ(角木)のことであり、
その原型たる<角木>はインドネシアに厳としで実在しており、
家屋文鏡もまた、
古型が 現在の千木よりも、
現在のインドネシアの<角型>に近かったことを
証明しているからである。
『参考』
小林登志子『シュメル-人類最古の文明』:中公新書
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