2010年4月12日月曜日

本当の出雲は何処?(2)


 出典:加治木義博:言語復原史学会
    異説・日本古代国家
    ㈱田畑書店
    167~170頁
 熊曾国は古来研究が多く、

 現在の鹿児島県と熊本県にまたがる広大な地域を

 さすとされている。

 この地域の中に、一ヵ所、

 出雲にピッタリの地名をもったところがある。

 鹿児島県北西部にある出水(イヅミ)である。

 <イヅミ>と<イヅモ。ではピッタリではないが、

 地元での本当の発音は「イヅン」なのである。

 <イヅン>に<イヅ>の出と、<ウン>の雲を当てることは

 非常にピッタリなのである。

 それは雲を<モ>と読ませるより、はるかによく合っている。

 <モ>に対しては母<モ>、茂<モ>という、

 より適当な文字があるからである。

 また逆に<イヅン>に出水を当てるよりも、

 よく合っているのである。

 ではなぜ出水<イヅミ>とされたか?

  それはこここそ出雲の重要な性格である

 黄泉国であったからにほかならない。

 それはまた鹿児島県全体の北西隅にあって、

 「根の国」の考え方とも完全に一致している。


 「地図:出雲地方(島根県)の現存地名と古地名(加治木原図)」

 ① 斐伊川 (肥の川)  ④ 鳥上山

 ② 神戸川        ⑤ 三郡山(熊野山)

 ③     (意宇川)  ⑥ 米 子(手間剗)


 「地図:出雲神話と関連のある出水地方(鹿児島県)の

     現存地名と古地名(加治木原図)」

 ① 樋之谷川(ヒの川)┐トイ┐鳥髪または鳥上

 ② 神戸川      ┘カミ┘鳥髪または鳥上

 ③ 米之津川(大川)=意宇川

 ④ 下大川内(大川)=意宇川

 ⑤ 上大川内(大川)=意宇川

 ⑥ 野間の関址(手間剗)

 ⑦ 伊勢山

 ⑧ 朝 熊

 ⑨ 川頭川(川上)

 ⑩ 武 本

 ⑪ 田之上(都のカミ=鳥上)


 また出雲は別名「葦原中つ国」でもあった、

 この出水平野の北部の地方は、

 今も葦北と呼ばれ、『記・紀』にも明記される古名である。

 また南には印南(イナミ)別嬢の伝説の発生地があり、

 これは葦南(イナミ)であるから、

 その中間が華原中つ国と呼ばれることは当然である。

 この附近は続日本紀天平勝宝元年八月の条に見る

 曾県(ソあがた)主岐直(キのあたえ)という名が証明するように

 キと日、火(ヒ)が交錯してキヒと呼ばれており、

 黄泉の黄(キー)が、このキヒと一致する。

 この岐という字は一字でフナトと読まれ、

 書紀のイサナキの命の黄泉国の段の一書では、

 追ってくる雷神たちを、

 神杖をこの岐の神として、

 さえぎったのが来名戸(クナト)のサエの神という名の

 起りだという。


 古事記では同じ神杖から船戸(フナト)の神が生れたとしており、

 クとフの転靴が見られる。

 この転訛はかなりあるもので、

 さきに説明しておいたから御記憶があると思う。

 この船戸の神のモデルと考えられる人名が

 出雲国造系譜の18世、19世にある

 「布奈臣(フナのオミ)」と「布禰臣(フネのオミ)」である。

 これは布奈都と書かれるからフナトなのである。

 ところがその子孫である岐直が曾県主、

 今流にいえば鹿児島県知事をしていたのである。

 では現在の出雲(島根県)はどういうことなのか?

 それは鹿児島からの移住民が、地名も神々も、

 伝説も運んで行ったものにほかならない。

 しかし、その問題は、

 もっと後でもっと多くの証拠をもとにして検討すべき問題である。

『参考』

小林登志子『シュメル-人類最古の文明』:中公新書

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