出典:加治木義博:言語復原史学会
異説・日本古代国家
㈱田畑書店
167~170頁
熊曾国は古来研究が多く、
現在の鹿児島県と熊本県にまたがる広大な地域を
さすとされている。
この地域の中に、一ヵ所、
出雲にピッタリの地名をもったところがある。
鹿児島県北西部にある出水(イヅミ)である。
<イヅミ>と<イヅモ。ではピッタリではないが、
地元での本当の発音は「イヅン」なのである。
<イヅン>に<イヅ>の出と、<ウン>の雲を当てることは
非常にピッタリなのである。
それは雲を<モ>と読ませるより、はるかによく合っている。
<モ>に対しては母<モ>、茂<モ>という、
より適当な文字があるからである。
また逆に<イヅン>に出水を当てるよりも、
よく合っているのである。
ではなぜ出水<イヅミ>とされたか?
それはこここそ出雲の重要な性格である
黄泉国であったからにほかならない。
それはまた鹿児島県全体の北西隅にあって、
「根の国」の考え方とも完全に一致している。
「地図:出雲地方(島根県)の現存地名と古地名(加治木原図)」
① 斐伊川 (肥の川) ④ 鳥上山
② 神戸川 ⑤ 三郡山(熊野山)
③ (意宇川) ⑥ 米 子(手間剗)
「地図:出雲神話と関連のある出水地方(鹿児島県)の
現存地名と古地名(加治木原図)」
① 樋之谷川(ヒの川)┐トイ┐鳥髪または鳥上
② 神戸川 ┘カミ┘鳥髪または鳥上
③ 米之津川(大川)=意宇川
④ 下大川内(大川)=意宇川
⑤ 上大川内(大川)=意宇川
⑥ 野間の関址(手間剗)
⑦ 伊勢山
⑧ 朝 熊
⑨ 川頭川(川上)
⑩ 武 本
⑪ 田之上(都のカミ=鳥上)
また出雲は別名「葦原中つ国」でもあった、
この出水平野の北部の地方は、
今も葦北と呼ばれ、『記・紀』にも明記される古名である。
また南には印南(イナミ)別嬢の伝説の発生地があり、
これは葦南(イナミ)であるから、
その中間が華原中つ国と呼ばれることは当然である。
この附近は続日本紀天平勝宝元年八月の条に見る
曾県(ソあがた)主岐直(キのあたえ)という名が証明するように
キと日、火(ヒ)が交錯してキヒと呼ばれており、
黄泉の黄(キー)が、このキヒと一致する。
この岐という字は一字でフナトと読まれ、
書紀のイサナキの命の黄泉国の段の一書では、
追ってくる雷神たちを、
神杖をこの岐の神として、
さえぎったのが来名戸(クナト)のサエの神という名の
起りだという。
古事記では同じ神杖から船戸(フナト)の神が生れたとしており、
クとフの転靴が見られる。
この転訛はかなりあるもので、
さきに説明しておいたから御記憶があると思う。
この船戸の神のモデルと考えられる人名が
出雲国造系譜の18世、19世にある
「布奈臣(フナのオミ)」と「布禰臣(フネのオミ)」である。
これは布奈都と書かれるからフナトなのである。
ところがその子孫である岐直が曾県主、
今流にいえば鹿児島県知事をしていたのである。
では現在の出雲(島根県)はどういうことなのか?
それは鹿児島からの移住民が、地名も神々も、
伝説も運んで行ったものにほかならない。
しかし、その問題は、
もっと後でもっと多くの証拠をもとにして検討すべき問題である。
『参考』
小林登志子『シュメル-人類最古の文明』:中公新書
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