2010年4月20日火曜日

稲羽の素菟はどこの話(2)


 出典:加治木義博:言語復原史学会
    異説・日本古代国家
    ㈱田畑書店
    195~197頁
 これと次の話とを比べてもらいたい。

 『ワニの王の所に、ウサギの王子が人質にとられていた。

 ウサギの王が王子を呼びもどす名案ほなかろうかと

 家来に相談すると、一人の忠臣が、

 「ワニには頼んでも、とてもきいてはくれないから、

  うまくだますよりほかありません。

  そのため使者は殺されることになりますから、

  私がそれをお引きうけしましょう」といって出かけて行った。

 そしてワニの王にむかい、

 「ウサギの王は最近ワニの王様に対して、謀反をたくらみ、

  王子の妃を自分のものにしたりして、私がいくら、

  いさめても言うことをきかないばかりか、

  私まで捕えて殺そうとしましたので、

  生命からがら逃げて釆ました。

  ウサギ王の謀反を防ぎ、

  ウサギ王子を新しい王になさることをお奨めします。

  それでないと彼は大国と手を結んで、

  逆にこの国を攻めるでしょう。

  手遅れにならぬよう、お急ぎ下さい」と告げた。

 ワニの王は怒り、忠臣らを案内者にして将軍を派遣し、

 次の王とするために王子も連れて行かせた。 

 計画は万事うまく行った。

 そこである島で停泊した時、草を集めて束ねて人形をつくり、

 王子にみせかけておいて、

 夜こつそり、王子達を別の舟にのせて逃がし、

 王子は重い疫病にとりつかれたから近よらないように、

 と言ってごまかしたが、見破られてしまった。

 ワニの将軍は激怒して、忠臣らを殺してしまい、

 ウサギの国を荒らしまわった。

 忠臣を殺された悲しみと、

 国を荒され城を次次に取られる悩みに苦しむウサギの王は、

 隣りの大国の王に救助してくれるように訴えた。

 それに対して大国の王は答えた。

 「今、軍備もないままで戦うのは、

  ますます傷を大きくするばかりだ。

  それよりはワニに罪を詑びて、悪気がなかったのだ、

  あれはみな忠臣が勝手にやったことだ、

  といって身の潔白を主張し、

  美女を選んで将軍に与えて永く引きとめておけば、

  この問題は解決する」

 その通りウサギ王が実行すると、

 大国の王の言った通りに事はおさまり、

 将軍は滞留の口実つくりに、他の国を攻めた。

 ウサギの王は心から大国王を讃えて言った。

 「あの方はきっと素晴らしい王になり、

  素晴らしい女王と結婚して、

  さらに偉大な大王になられるであろう!」

  すべて、その通りになった』

 前の白ウサギの話と、この話が、全く同じものの変型であって、

 後の方が脚色が念いりに出来ている、

 とお感じになっただろうか?。

 「地図:イナバの白ウサギ型伝説の分布(加治木原図)」

 (朝鮮にはない)

 ① インド

 ② セイロソ

 ③ ビルマ

 ④ タイ

 ⑤ マレー・イソドネシア

 ⑥ ボルネオ

 ⑦ セレべス

 ⑧ パプア

 ⑨ ミンダナオ

 ⑩ ルソン

 ⑪ ベトナム・カンポジア

 ⑫ 南支

 ⑬ 台湾

 ⑭ 日本

 『参考』

小林登志子『シュメル-人類最古の文明』:中公新書

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