2010年4月17日土曜日

発祥地説の欠陥点(2)


 出典:加治木義博:言語復原史学会
    異説・日本古代国家
    ㈱田畑書店
    187~188頁



 この簡単な状況がのみこめずに、一つの手がかりが見つかるとすぐ、

 日本人の先祖はポリネシア出身だとか、ヒマラヤ出身だとか、北方から来たとか言われて来た。

 それは何も神話の分布に限ったことではない。

 言語や習慣や、考古学的発掘品などから、ショートした思考で、そこを天孫族の故郷である、

 という説が次々に現われては消えた。

 それが何故であったか、もうおわかりだと思う。

 分布の末端や、過程の一つに過ぎないものを、うかつにも始まりと思いこんでいるのである。

 そこでは何が欠けていたか?

 もっと多くの情報を広く集めた上で、

 その証拠たちの出発点「始め」を求める「復原」の仕事が欠けていたのである。

 私たちが本書で、混乱した神名や人名を「復原」することによって、

 真実の姿を知ることができたのと同じく、

 すべての手がかりは復原を重ねることによって真相を物語る。

 それを知らずに、生のままの採集品を大発見だと思うのは、猛毒のあるフグを釣って、

 そのまま食べるとの同じ幼稚さなのである。

 それは適切に料理してこそ美味な栄養源になるのであって、そのまま食べれば、

 生きるために食べたつもりでも、愚かにも「死」しか得られない。

『参考』

小林登志子『シュメル-人類最古の文明』:中公新書

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