出典:加治木義博:言語復原史学会
異説・日本古代国家
㈱田畑書店
187~188頁
この簡単な状況がのみこめずに、一つの手がかりが見つかるとすぐ、
日本人の先祖はポリネシア出身だとか、ヒマラヤ出身だとか、北方から来たとか言われて来た。
それは何も神話の分布に限ったことではない。
言語や習慣や、考古学的発掘品などから、ショートした思考で、そこを天孫族の故郷である、
という説が次々に現われては消えた。
それが何故であったか、もうおわかりだと思う。
分布の末端や、過程の一つに過ぎないものを、うかつにも始まりと思いこんでいるのである。
そこでは何が欠けていたか?
もっと多くの情報を広く集めた上で、
その証拠たちの出発点「始め」を求める「復原」の仕事が欠けていたのである。
私たちが本書で、混乱した神名や人名を「復原」することによって、
真実の姿を知ることができたのと同じく、
すべての手がかりは復原を重ねることによって真相を物語る。
それを知らずに、生のままの採集品を大発見だと思うのは、猛毒のあるフグを釣って、
そのまま食べるとの同じ幼稚さなのである。
それは適切に料理してこそ美味な栄養源になるのであって、そのまま食べれば、
生きるために食べたつもりでも、愚かにも「死」しか得られない。
『参考』
小林登志子『シュメル-人類最古の文明』:中公新書
0 件のコメント:
コメントを投稿