2010年4月19日月曜日

稲羽の素菟はどこの話(1)


 出典:加治木義博:言語復原史学会
    異説・日本古代国家
    ㈱田畑書店
    193~194頁


 私がいくら悲憤こうがいしても、まだピンと来ない方々のために、

 神話は宗教用に作られたものばかりではない、

 という生きた証拠をお眼にかけよう。

 主題はイナバの白ウサギである。

 さっそく神話伝説辞典にはどう書いてあるか見てみよう。

 (69頁、原文のまま)

 『いなばのしろうさぎ 稲羽の素蒐 「古事記」に見える。

  和邇(わに)をだまして、

  その眷属の数をわが眷属の数と比べて見ようと、

  和邇を海に並ばせ、

  その背を飛んで隠岐島から因幡まで渡る。

  渡りきった所で、うまく欺き了せたことをあかすので、

  和邇は怒り、兎の皮をはぎ取る。

  痛さのあまり泣いている所を、

  大国主命の兄の八十神達が因幡の八上比売の許に

  求婚に行く途中通りかかり、

  塩水を浴びると良いと教えるので、

  その通りにすると苦痛が加わり泣く。

  大国主が通りかかり真水で洗い、

  蒲黄(がまのはな)の上に転べば、

  本復すると教えるので、それを実行すると癒ったという。

  この話は有名だが、

  民間説話が大国主の神話に結びついたものらしい。

  インドネシアの小鹿が、鰐どもをだまして並ばせ、

  背を踏み川の対岸に渡る話と京のものであろうと言われる。』

 「写真:古事記の原文の一部」

 大国主命は大穴牟遅神となっている。

 「因幡の白兎」

 故、此大国主神兄弟八十神坐。

 然、皆国者避於避於大国主神。

 所以避者、其八十神、

 各有欲婚稲羽之八上比売之心、共行稲羽時、

 於大穴牟遅神負帒為従者率往。

 於是、到気多之前時、裸菟伏也。爾、八十神、

 謂其菟云、汝将為者、浴此海塩、当風吹而、

 伏高山尾上。故、其菟、従八十神之教而伏。

 爾、其塩従乾、其身皮悉見吹折故、痛苦泣伏者、

 最後之来大穴牟遅神、見其菟言、何由汝泣伏。

 菟答言、僕在淤岐島、雖欲度此地無度因故、

 欺海和爾(此二字、以音。下效此)言、

 吾与汝競欲計族之多少。故、汝者随其族在悉率来、

 自此島至于気多前、皆列伏度。

 爾、吾踏其上走乍読度、於是知与吾族孰多。

 如此言者、見欺而列伏之時、吾踏其上、読度来、

 今将下地時、吾云、汝者我見欺言竟、

 即伏最瑞和邇、捕我悉剥我衣服。

 因此泣患者、先行八十神之命以、誨告、浴海塩当風伏。

 故、為如教者、我身悉傷。於是、大穴牟遅神、教告其菟、

 今急往此水門、以水洗汝身、

 即取其水門之蒲黄、敷散而、輾転其上者、汝身如本膚必差。

 故、為如教、其身如本也。

 此稲羽之素菟者也。於今者謂菟神也。故、

 其菟白大穴牟遅神、此八十神者、必不得八上此売。

 雖負帒、汝命獲之。


『参考』

小林登志子『シュメル-人類最古の文明』:中公新書

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